October 02, 2009

ボーン・レガシー

『ボーン・レガシー』を読了。

あらすじ:
ジェイソン・ボーンは、デイヴィッド・ウェブと名乗り、アメリカ・ジョージタウンの大学教授として暮らしていた。だがボーンの平穏はつかの間、暗殺者のカンに命を狙われることになる。カンの狙撃から逃れ、コンクリンの元を訪れたボーンだったが、すでにコンクリンは殺されていた。官憲からも殺人容疑で追われるはめになったボーンは、いきなり諜報の世界へ引きずり戻される。人道的救済会社代表の仮面をかぶったスパルコは、目的達成をじゃまするコンクリンを消して、ボーンに罪をかぶせようとしていた。そのために、暗殺者のカンをボーンの元へ導いたのだ。一方、パリを訪れたボーンはカンから聞かされた衝撃的な事実を受け止められないでいた。パリ警視庁からも追われるボーンは、旧知の文化相ロビネットに助けられ、軍用機でブダペストへと向かう。レイキャビクでは、アメリカ、ロシア、アラブ諸国が参加するサミットの準備が進められていた。ドクター・シェイファーが開発したバイオ兵器を散布する装置「NX20」を手に入れたスパルコは、サミットでのバイオ・テロを目論んでいた。スパルコの狙いを見破ったボーンはカンと手を組み、計画を阻止するためにレイキャビクへと飛ぶ。


これは果たしてボーンなのだろうか?。ボーンに必要となる人物は冒頭から死んでしまっており全て白紙。単なる記憶喪失だった元CIA諜報員が、成り行きで世界的危機を救うという薄っぺらい話になってしまっている。ボーンの必要性を感じない...。カンが唯一の救いのようであるが、かなり強引な印象をうける。ようするに、テロと戦う正義の味方!という、沈黙シリーズ的な仕上がり...。

これでは映画化しても失敗は目に見えているが、ジョシュア・デトゥマーが脚本をリライトしているという「ボーン4」は果たして?。沈黙シリーズのように、名前だけ...っていうなら止めて欲しいですね。少なくともマット・デイモンには出て欲しくないな。

[ 書庫データ ]
ボーン・レガシー(上)
著 :エリック・ヴァン ラストベーダー
訳 三角和代/崎浜祐子/待兼音二郎
ゴマ文庫 700円 -版 343p ISBN4-7771-5087-9

ボーン・レガシー(中)
著 :エリック・ヴァン ラストベーダー
訳 三角和代/崎浜祐子/待兼音二郎
ゴマ文庫 700円 -版 301p ISBN4-7771-5088-7

ボーン・レガシー(下)
著 :エリック・ヴァン ラストベーダー
訳 三角和代/崎浜祐子/待兼音二郎
ゴマ文庫 700円 -版 335p ISBN4-7771-5089-5

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October 03, 2008

拒絶空港

『拒絶空港』 を読了。?

あらすじ:
パリ発 成田行 NIA 206便(B747-400)は定刻にド・ゴール空港を離陸。しかし、離陸時にタイヤがバーストした可能性があるとパリから成田整備に連絡が入る。無事着陸可能なのか?被害状況がつかめないまま着陸させるための可能性を模索している中で更なる衝撃が...。ド・ゴール空港が放射能を感知し封鎖。NIA206便に放射性物質が持ち込まれたかもしれないと連絡が入る。何とか無事に着陸させたい整備。同僚や会社のため情報管理し、最悪は被害をNIA206だけにとどめたいFOX(運航管制本部)。はっきり飛行指示をしないFOXに苛立ちを見せるFSS(フライト・サポート・ステーション)。取りまとめられない空港支店(支店長)。そして、地上から得られる少ない情報から、乗客・乗員のため知恵を絞り全力を尽くした機長達クルー。果たして2重のトラブルに見舞われた旅客機が着陸出来る空港は存在するのか?。日本のために犠牲となるしかないのか?。果たして...。

ちなみに、著者、内田幹樹 氏の過去のLOGは以下の通りです。
パイロット・イン・コマンド
タイフーン・トラップ - 機体消失
機長からアナウンス
機長からアナウンス 第2便
操縦不能
査察機長


2重のトラブル。少し出来すぎな設定だなぁというのが最初の印象でした。これまでの作品ではあまり感じなかった、違和感というと言いすぎかもしれませんが、引っかかるものを感じたのは確かです。

今回はタイトルの通り、トラブルを抱えた旅客機を受け入れる場所(空港)がなく、そのために地上と空で思わくが交錯するわけですが、どうするのかな?結末がハッピーエンドであることはこれまでの作品から分かっているものの、作品の展開や、幕引きの中身が中盤まで分からず一気に読んでしまいました。とはいえ、読み進めるとおおよそ予想通りというか、あまり意外性は感じなかったですね。一番気になったのは、航空小説というよりも、横の連携が無い現代社会をいう切り口になっており、以外と言えば以外ですが、少々あっけない結末であったことです。

内田氏ならではの航空小説を期待し、確かに組織的な役割等は新鮮であるものの、縦社会の弊害を描いた”地上”がメインであり、しかも結局は地上で何かをしたわけではなく、機長の機転でいつのまにか解決出来てしまった...。その消化不良感ですね。その事実は小説の中で【本人】も触れられており、葛藤があったのかな?という気もします。”地上”の何処かの部門(整備とか)をもっと掘り下げてみたらもっと内田氏らしさが出て楽しめたのかな?という気がしました。

この作品が私にとって内田氏最後の作品となってしまった事が非常に残念です。

[ 書庫データ ]
拒絶空港
著 :内田幹樹
訳 -
原書房 1,600円 -版 280p ISBN4-562-04027-0

Kyozetukuukou

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June 21, 2008

テメレア戦記 気高き王家の翼

『テメレア戦記 気高き王家の翼』 を読了。

あらすじ:
19世紀初頭、ナポレオン率いるフランスと戦闘中のイギリス海軍に所属していたウィル・ローレンスは、疲弊しきったフランス船に勝利し、艦内からドラゴンの卵を見つける。当時、ドラゴンは空中戦の要であるが、そのパイロットになると常にドラゴンと共に過ごす事となり、生涯を捨てる事を意味するのだった。孵化が近い事を知ったローレンスはくじ引きでパイロットを決めるのだが、孵化したドラゴンが選んだのはローレンスだった。絶望の中、テメレアと命名したドラゴンと共に空軍に籍を移し、日々特訓を続けるのだが、テメレアは中国産の希少種である事が分かる。次第に空軍に馴染み、テメレアとの厳しい訓練の中で友情を越えた感情が芽生え始めた時、ついに出撃命令が下るのだった...。

友人に薦められ久々に購入した本。ピーター・ジャクソンによる映画化も検討されていると知っておおよそのストーリーは予想がついたが、まさに予想通りだった。勿論、いい意味で。(⌒ー⌒)

前半の訓練部分は、ローレンスとテメレア、そしてローレンスと空軍が馴染んでゆくまでを、絡まった紐を少しづつ解くように進んでゆく。このスローペースな感じがアクションを期待している私をじれったく思わせ、少し退屈に感じた。しかし、テメレアが実践に出るあたりから期待した展開となってきて、ローレンスを気にかけながらの戦闘シーンなとは映像化された時どうなるのか今から楽しみとなる。そういう点を考えると、ドラゴンは単なる乗り物ではなく、友人というか恋人のようであり、そこに面白さがあるのは間違いなく、だからこそ前半部分の重要性が見えてくる。なるほど。

ど派手な設定ではあるものの、根底に”愛”がある作品である事を忘れてはならくて、そういう意味では「キングコング」的な一面を感じる。ドラゴンがフォーメーションを組んだ戦闘シーンも魅力であり、精神的な面だけではなく、VFX的な楽しみも十分に期待できるバランスされた構成といえるかもしれない。また、話がシンプルなのもいい。ドラゴンの種別など少し面倒な表現(部分)もあるものの、さして重要ではないし、自分の中で適当に分かりやすく設定してしまってもさしたる問題とは思えない所も魅力かもしれない。挿絵では、やはり違いは微々たるものに感じたが、これがピーター・ジャクソンがどのように映像化し楽しませてくれるのか期待が膨らむ。前述した通り、ストーリーがシンプルであるため、比較的低年齢から受け入れやすいのが、逆に仇となるかどうかだけが心配。
実はキングコングのリメイク版は少しガッカリしたから...。(;´Д`)

だいぶ脱線してしまったけれど、帆船とドラゴンにナポレオンという設定はやはり魅力で、今後、ナポレオンとの戦術的な駆け引きなどが加わり、ど派手なドラゴンの空中戦などが展開される事を期待してしまう。そんな”次”が待ち遠しい作品である事は間違いない。巧く次につなげられてしまったなぁという感じさえする。(Λ。Λ)
久々に読んだ本ではあるけれど、なかなか楽しめた1冊となった。続編の発売が待ち遠しい。


[ 書庫データ ]
テレメア戦記 (the Temeraire Series - His Majesty's Dragon - )
著 :ナオミ・ノヴィク (Naomi Novik)
訳 那波かおり
双葉社 1600円 ?版 422p ISBN978-4-86332-596-8

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April 26, 2007

新幹線99の謎

『新幹線99の謎』 を読了。?

あらすじ:
1.進化しつづける「新幹線ファミリー」の謎
2.知っているようで知らない意外な事実
3.とことん知りたい「安全とメカニック」の謎
4.とことん知りたい「走行」の謎
5.世界に誇る日本の「リニア新幹線」の謎
6.威信をかけた各国の「新幹線」の謎
以上、大きく6PARTでした。

これは興味の問題ですが、飛行機好きの私がそっち系の「謎シリーズ」を買う勢いで本書も買ったわけで、やっぱりそそられるネタが少ないんですね。
勿論、99項目あるわけで、電車の好きな方は十分に楽しめる内容だと思います。

ちなみに私が印象に残ったのは2つ。
・停止~時速200Kmまでに必要な距離は4Km
・ロングレールは青函トンネルの52.57Kmで、実は溶接してロングにしている。

空気抵抗対策だったり、食堂車の話、必要なパワーの問題、停車に必要な条件、運転制御の話など色々ありました。

[ 書庫データ ]
新幹線99の謎
著 :新幹線の謎と不思議委員会
訳 -
二見文庫 円 ?版 220p ISBN4-576-05115-6

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April 24, 2007

月へのぼったケンタロウくん

『月へのぼったケンタロウくん』 を読了。

あらすじ:
ひとりぼっちのおかあさんとひとりぼっちのおじいさん、そしてケンタロウくん。月で待ってるよ、と言い遺してこの世を去ったおじいさんに、ケンタロウくんは会いにいく。

おじいさんとの約束。6才になったケンタロウくんと月で会うという。それは著者が最愛の人を亡くした傷が癒えるのに必要だった時間とも言えるんだろう。暗闇は「命」を吸って膨らんでいる。悲しみは暗闇を増やす。暗闇から抜け出す方法は人それぞれあるんだろうけれど、それは時間だったり、思いを解放する事だったり、色々。勿論、ケンタロウくんの存在が大きかったのは間違いなくて、お互いを助け合える人がいる事で救われていて、そういう人が私もまもなく出来るのが救いかもしれない。

[ 書庫データ ]
月へのぼったケンタロウくん
著 :柳 美里
訳 -
ポプラ社 1200円 ?版 ?p ISBN4-591-09764-9

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April 11, 2007

ビタミンF

『ビタミンF』 を読了。

重松清氏の作品を読むのはこれで2作目。

「ゲンコツ」
自販機メーカの営業マンが、自分をゲンコツをしみじみと見る。小さく弱々しいゲンコツを見る。38歳の彼の中に残っている”仮面ライダー”は彼に何を与えてくれたか?。
ほんのちょっとでいい。勇気を持って行動すれば変わる事があるのだということに気づかせてくれる。いつのまにか真っすぐ見つめる事が出来なくなってしまった自分に気がつく人は多いハズ。自分も”見て見ぬフリ”をしていちゃ駄目なんだけど...。

「はずれくじ」
亡き父の楽しみは宝くじを買う事だった。しかも毎回1枚だけ...。そんな父の思いの分かる年齢になった時、宝くじは”当たらなくてもいい”ものだと悟ったのだった。
勝敗ではなく、踏ん張る力の源。なんでもいいからそういう”心”の支えになる希望が必要で、私にとってそれはなんだろう?と考えたとき、実は無いかもしれないと感じた。この作品がきっかけで”何か”つかめればいいなと期待する。

「パンドラ」
家族の全てを知っていたつもりだった40歳の父親。しかし、パンドラの箱には何も知らなかった現実が詰め込まれており、その事実に絶望する。
パンドラの箱には希望があるのか?それとも絶望か?。普通は絶望なんだけれど、少しは希望を持って生きていかなきゃ!と思わせてくれる。

「セッちゃん」
いじめられていた中学二年生の娘は、自分を転校生の”セッちゃん”に置き換え家族に心境を語っていた。そのことを知った両親はどのように娘と接し、娘はどのように学校生活を送るのか?。
”なんとなく嫌い”とか、”皆が嫌っているから私も”というのはよくある。そういう現実とどのように向き合ってゆくか?というヒントがある。全てがこれほどうまく解決出来るとは思えないが、少なくとも一つの指針になるのではないかと思うし、自分が親の立場だったらどうするか?非常に悩ましく、でも逃げられない現状。

「なぎさホテルにて」
17年前の恋人と訪れた”なぎさホテル”。その時に出した未来ヘの手紙。妻ともうまくいかず最後の家族旅行のつもりで訪れたホテルで受け取ったプレゼント。そのプレゼントは壊れかけた家族を再生させるものだった。
なんとなく引っかかる所がある。原因は自分にもあるんだけど自力では取り戻せない...。凄くよく分かる。お互い子供のようにぶっちゃけていけば解決出来るのか?。恐らくは相手もその事を認識し、ともに努力する必要がありそうな気がする。

「かさぶたまぶた」
いつでもどこでも完璧な人間であろうとした父親。そんな父親に心を閉ざす子供達。父親の器とは?。
人間逃げ道が必要で、その逃げ道を父親が塞いでしまうとこうなるよ!ということで、だらしない父親と立派な父親のトレードオフが悩ましいところなんだと思う。理想の父親像を考えると、自分が子供になる必要があるということか?。

「母帰る」
一方的に家族を捨てた母を想う父親。理解に苦しむ子供達。そんな父親の真意とは?。
迎えてくれる人が必要。確かにそうなんだと思うけれど、これからの日本はどうなっちゃうんだろう?。近年、孤独のまま老後を迎える方が増えているのは間違いないと思うが、これって個人レベルでどうにかなる問題なんだろうか?。

それぞれの物語にFのキーワードが挿入されて、35~45歳くらいのお父さんがターゲットなのかな?って感じ。
日常の些細な問題を正面からとらえ、ギリギリ着陸させるあたりの巧みさ。結論は読者にとっておいてくれる構成。
この小説が心に効くビタミンであったかどうかは秘密。

[ 書庫データ ]
ビタミンF
著 :重松 清
訳 -
新潮文庫 514円 ?版 354p ISBN4-10-134915-0

Vitaminf

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March 28, 2007

第三の時効

『第三の時効』 を読了。

横山秀夫氏の作品としては6冊目。
短編集でしたが、舞台となるF県警捜査一課は全編共通で、主役こそ異なるものの登場人物が同じであったため、長編物とも思える構成で非常に読みやすいです。F県警の強行犯第一課を舞台とした6つの物語で構成されておりました。

「沈黙のアリバイ」
強行犯一班・朽木をメインとした物語。朽木は過去の交通事故以来決して笑わず、理論的な捜査と、かすかな手掛かりも見逃さない捜査で一班を支えてきた。部下が落としたハズなのに、突如裁判で犯人がアリバイを主張。そのアリバイは肯定も否定も出来ない一見完璧なアリバイだった。物言わぬアリバイを前に「マシーン」はどのように捜査し落としてゆくのか?。
完璧なアリバイを作り出す過程や、人物描写が見事で、映像が浮かんでくるリアルな表現でありながら無駄のない文章。警察が落とされるという展開の意外性など、あいかわらず氏の作品はワンパターンではなく、いったいどこに底があるのか?底など存在しないのではないか?などと期待が膨らむ”つかみ”に、まんまと魅了され離れられなくなってしまった。

「第三の時効」
強行犯ニ班・楠見をメインとした物語。楠見は公安から左遷させられてきた男で、大胆且つ冷徹な性格。時効。誰もが耳にした事のある時効15年という単語。しかし、時効は国内に滞在している場合にカウントアップされ、海外にいる期間はカウントされない。それが第二の時効の正体。犯人は第二の時効まで知っていた。しかし、楠見は第三の時効を作り出す。
時効に関する話や、真犯人逮捕に至る経緯は最後の最後まで予測がつかず、ミステリー小説馴れしていない私は夢中になったし、まさか犯人が...という驚き。そして、何よりも時効を「作ってしまう」という衝撃。著者の経験と知識量を見せつけられた感じがした。そしてマシーンがマシーンのままでエンディングをむかえるのだけれど、それがなんとも結果とのギャップ感がいい。言えば、楠見という人間をもっと知りたくなってきますね。浦沢直樹氏の「MONSTER」という作品に出てくるハインリッヒ・ルンゲ警部とダブってしまいました。

「囚人のジレンマ」
強行犯を束ねる田畑課長と、各班の強烈なライバル意識むき出しの捜査。共犯者が本当に自分を売っていないという確証は無い。その罠を匠にしかけて(時にハッタリ)囚人を精神的に孤立させ落とす(自供させる)方法がある。各班がそれぞれの方法で捜査を進めるなか、田畑課長は各班のライバル意識の強さに乾ききった空気を感じていた。捜査協力など皆無。それぞれ実力者が揃っており文句もつけられない。自分の成績にも影響してくるのだから...。しかし、砂漠に見えた捜査一課だったが、ちゃんと”心”を持ち合わせた最強集団だった。
連続ノックアウト。そんな感じです。読むと確かに納得なんですよね。信頼していた相棒が裏切ったと知ったら?。そりゃ本人から聞いていなくて嘘かもしれないけれど、やっぱりどこかで信じてしまうんだと思うんです。その辺の心理面がとにかく面白くて、しかも!しかも砂漠にオアシスを発見する結末。必ず2つ以上のキーワードが隠されているような気がする。だから単調にならず、複雑過ぎず楽しめるんだと感じました。課長が囮になるという話も話が厚みを持つ要素だったと思います。

「密室の抜け穴」
強行犯三班・村瀬をメインとした物語。村瀬は勘、ひらめきで勝負してきたたたき上げタイプ。動物的嗅覚で事件を解決に導く。感とは言ってもちゃんと経験から裏付けされた第六感だ。そんな村瀬が現場で倒れ、代理を努めた東出班長代理はうまく事件を解決出来なかった。容疑者を逃がしてしまったのだ。直後、復帰した村瀬も含め、部長や各班が会議室に集められた。なぜ容疑者は各班が監視していた密室から逃げ出す事が出来たのか?しかし各担当の言い分は自己防衛だった。村瀬の読みで密室に穴が空く。
なぜ密室から脱出出来たのか?。当然のことながら「その事実」に注目して読み進んでいった。全員の言い分を逃さず聞き出し原因を突き止めるために。しかし、その努力は嬉しくも無駄に終わった。密室は1箇所ではなかったという驚き。それを見抜いた村瀬の嗅覚たるや凄まじい。これまでの作品に比べると、終盤で強引とも思える主役交代と幕引きに物足りなさを感じなくもないが、それでも十分に村瀬の職人魂が伝わってきて楽しめた。

「ペルソナの微笑」
子供を使った犯罪。その子供はわけも分からず利用されているだけだった。単なる道具として。嫌な匂いを消す薬があると教えられ、言われるがままに受け取った薬は青酸カリだった。それは13年前に起きた未解決の事件として、強行犯のなかでいまだに消えていない...。その青酸カリを使った事件が隣接する地区で発生した。直ちに強行犯も出動する。偽りの笑顔に隠された過去と、偽りの笑顔と思っていた本当の素顔は?。
ちょっと路線が変わった感じの作品で、個人的にはあまり印象に残っていないんですね。これまでと違い人物描写が強烈では無いような気がしました。心理描写はもちろんあるわけですが、ずっと人間的にも何かしら興味を引かれる魅力があっただけに、スッと終わってしまった感があります。この辺が私の限界なのかもしれません。この本を読み返す日がくるでしょう。その時に真の魅力を知ることになるのかな?。

「モノクロームの反転」
一班と三班が同じ事件を担当した。冒頭から主導権争い。被害者宅をおさえたのは”主担当”の三班。目撃者宅をおさえたのは”応援出動”の一班。それぞれ、直感と精密捜査で事件解決を目指す。それぞれの方法で事件を追い詰めてゆくのだが、目撃者の証言を一班・朽木が見事な考察で検証する。まさに精密捜査の真骨頂を見る。また、三班・村瀬も独自の眼力で犯人を追い込んでゆく。その決定打は白色と黒色だった。
モノクロームの反転とは巧いタイトルだと関心したし、写真撮影を趣味にしていた経験から、人間の見た目の曖昧さを実体験として痛感していたものにとっても、著者の洞察力・ボキャブラリーに驚いた。絵画の世界、とりわけフェルメールを筆頭とする色彩感覚に通じる鑑賞の面白さがある。とにかく2色の色が3つ(車、チューリップ、棺)に使用され、それぞれの色が作品に効果的に活用され無駄がない。色を使ってこれだけの作品が出来るものなのか?と、ただただ著者の力量に惚れてしまうばかり。

この心地よさ。一度体験したらやみつきです。警察小説の醍醐味はもちろんのこと、心理描写や、その他の要素を加えた作品の濃さは、およそ短編とは思えない完成度にあると思います。これだけの作品を世に出し続けることが出来る氏は作家が天職なんでしょうね。
未読の作品も多数。次の作品が楽しみです

横山 秀夫氏のこれまでのエントリーは以下です。
動機
ルパンの消息
陰の季節
クライマーズ・ハイ
半落ち

[ 書庫データ ]
第三の時効
著 :横山 秀夫
訳 -
集英社文庫 \629 ?版 410p ISBN4-08-746019-3

Dai3nojikou

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March 03, 2007

デセプション・ポイント

『デセプション・ポイント』 を読了。

あらすじ:
アメリカ国家偵察局職員(NRO)レイチェル・セクストンの仕事は大統領へ提出する機密情報の分析。レイチェルの父・セジウィック・セクストンは次期大統領選挙に向け活発に活動中であり、アメリカ航空宇宙局(NASA)の失敗や莫大な予算浪費を避難し優位にあった。そんな時にレイチェルは現合衆国大統領・ザック・ハーニーに呼び出され、エアフォースワンで秘密裏に会合し”ある依頼”を受ける。父が攻撃中であるNASAが発見した”ある物”を確認し、自らの分析結果を”ある人物”に伝える事だった。レイチェルが確認した”ある物”はNASAやハーニーの窮地を救うだけに留まらない世紀の大発見であるハズだったが、”発見”の影でデルタフォースが任務を遂行し、大統領上級顧問、NASA長官、NRO局長など、政治的陰謀も見え隠れする。はたして、レイチェルと4名の民間研究者に”ある物”がもたらす試練とは?宇宙を巡る様々な争いが始まる。

大統領に呼び出され、”ある物”の正体が分かるまでのスピード感にはとても満足し、多少専門的なNASAの話なども個人的に好きな話題であったため非常に楽しめた作品であった。
しかし、下巻あたりから展開が急変、NASA世紀の大発見から政治的な陰謀に話が移ると、途端に展開がバレバレな消化するだけの作品になってしまう。展開の変化を期待したが、願い叶わず、知的好奇心を満足させてくれるサスペンス物語は影を潜め、権力との戦いと犯人当てクイズに終始する。淡々と消化せざるおえない状況に絶望感すら漂ってきそうだった。
確かに正確な悪役を特定する事は出来なかったが、それでも殆ど当たったようなもので意外性を感じる結末ではなかったし、しかも、よりにもよってラブシーンで終わる辺りはハリウッドを意識しているか、影響され過ぎているようであり愕然とした。
最初は映像化したら面白いかも?と思ったが、あまりに予定調和である事を考えると無謀か...。

前半が面白かっただけに後半の展開が残念で、もう少し科学的な話もボリュームを持たせたままエンディングまで行ってくれれば...と思う。ちなみに、戦略原潜ではないとはいえ、ロサンゼルス級の攻撃原潜が発信者不明の”SOS”に反応し浮上するのはあり得るのだろうか?。

[ 書庫データ ]
デセプション・ポイント (DECEPTION POINT)
著 :ダン・ブラウン (Dan Brown)
訳 越前 敏弥
角川文庫 上巻 667円 ?版 427p ISBN4-04-295508-8
下巻 667円 ?版 398p ISBN4-04-295508-6

Deceptionpoint

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February 20, 2007

動機

『動機』 を読了。

横山秀夫氏の作品としては5冊目。久々の短編集でしたが、非常に濃密で、短編だったのか?と思わせるあたりは巧い!と思います。4つの物語で構成されておりました。

「動機」
警察手帳を一括保管・管理していたが、その手帳30冊が盗まれた。
外部の犯行か?内部か?内部の犯行だとしたら理由は?個人的な恨みか?。一括保管の起案者であるJ県警本部警務課企画調査官・貝瀬正幸にのしかかる責任問題。記者発表まで残り時間僅か。タイムリミットまでに犯人を特定出来るか?手帳は?。「都合のいい犯人」であったり「父と子」というキーワードが非常に分かりやすく物語の潤滑剤として有効に機能しており、警察の確執と人生をうまく組み合わせて一気に読めてしまう流れはさすが。

「逆転の夏」
13年前、保身のため女子高生を殺害した山本洋司。
仮出所し、ひっそりと暮らしていた。彼の望みは「いつか家族の元に戻ること」。そのかなわぬ思いにケリをつけるため妻に生活費を送金し続けていた。そんな時、突然”カサイショウジ”と名乗る男から殺人の依頼を受ける。最初は話しを聞くだけ...しかし、依頼を受けてもいないのに山本の口座にはどんどんお金が振り込まれてくる。「家族」を取り戻すための金が欲しくてついに”カサイショウジ”の言う完全犯罪にのってしまうのだが、その先に待っていた現実はまさに逆転だった。途中で少しは怪しいなぁとは思うものの、スピード感がありあっという間にエンディングへ突入してしまった。更生したい者と、殺人を誘惑する者の駆け引きが絶妙で面白い。

「ネタ元」
弱者のための記事を書きたい!と地方紙に入社した水島真知子。
ネタ元と呼ばれる「情報提供者」の存在と、女であることの不公平感。入社時の思いなどとうに忘れ、とにかくスクープを!という現在のメディアを象徴する展開と、実はネタ元と共存していなかったという展開は、日常ある勘違いとうまくリンクしていて、不公平感さえも被害妄想であったと一蹴してしまうところが微妙でハラハラしてしまう。

「密室の人」
裁判長・安斉利正が法壇で居眠りし、あろうことか妻の名を言ってしまった。
面白がる同僚。煙たがる上司。新聞に書かれては困ると翻弄する安斉は雲の上から地上に降りてきた普通の人だった。裁判官という特殊な職業の裏側と、妻の静かな攻撃という意外?な組み合わせのギャップがなかなかで、次の展開が気になり気がつけば幕がおりようとしていたが、地上で安斉が向かう先に何があるのか?。つい期待してしまうのは男の身勝手だろうか?。

横山 秀夫氏のこれまでのエントリーは以下です。
ルパンの消息
陰の季節
クライマーズ・ハイ
半落ち

[ 書庫データ ]
動機
著 :横山 秀夫
訳 -
文春文庫 \514 ?版 304p ISBN4-16-765902-6

Douki

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January 20, 2007

天使の卵

『天使の卵』 を読了。

あらすじ:
19歳の画家志望の予備校生・一本槍歩太が、8歳年上の精神科医・五堂春妃に一目惚れする。歩太には恋人がおり、名前は斉藤夏姫と言ったが、春妃の妹である事を知る。春妃は結婚し、夫を亡くしていたのだ...。そして春妃は入院している歩太の父親の主治医となった。夫の死、患者の死、そして妹を裏切る歩太との関係に苦しむ。そんな時、衝撃の事故が起きて...。

小説すばる新人賞と言えば荻原浩氏の「オロロ畑でつかまえて」を思い出す。初々しいだけではなく、次が気になる思いにさせてくれた娯楽小説であった。そういう事もあり、また映画化!という帯に誘われ手に取ったみた。

最初の感想。なんだこれ?。読みやすいんだけど何も残ってない...。少し時間をおいてみた。やっぱり変わらない。┐('~`;)┌

これで恋愛という部分に真正面から向き合っているんだろうか?。審査員の方はむしろ複雑化しすぎてやしないだろうか?だから少しのストレート性に負けていないか?。この作品にパワーはなく、あまりに普通過ぎて、そして伏線が非現実的過ぎてギャップに苦しんだだけだった。夫が自殺し、患者が自殺し、その弱みにつけ込む若造と、安易に受け入れ避妊に失敗する30才近い女。そんな設定でだらだらと書かれても困ってしまう。最後の最後、1行でひっくり返そうという試みは否定しないが、それまでが退屈過ぎたのが致命的だったと思う。

恋愛というより、生と死の対比を前面に出して「生きること」を書いて欲しいと思う。記憶の世界に生き、過去の世界から解放され生きてゆくさまを書いたらどうだったんだろうか?。「現実と折り合いをつけてゆく」という葛藤。

既に映画化されているようだが酷評のようであり興味も失せた。まぁなんとなく分かる気がする。(^^;

[ 書庫データ ]
天使の卵
著 :村山 由佳
訳 -
集英社文庫 390円 ?版 208p ISBN4-08-748492-0

Tenshinotamago

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