硫黄島からの手紙
あらすじ:
アメリカ軍は、日本本土爆撃のB29を護衛する戦闘機の拠点として硫黄島に向かった。1944年6月。日本は本土防衛の最後の砦である硫黄島を栗林忠道中将(渡辺謙)に託す。栗林はこれまでの戦闘方法にこだわる事なく、アメリカ留学時の経験も生かして戦術を練るのであった。かくして1945年2月。硫黄島の戦闘など5日で終わるだろう目論んだアメリカの猛攻撃に対し、36日間もの激戦をくりひろげ、アメリカに大きな打撃を与えるに至った。届く事のなかった当時の兵士達の手紙が見つかり、我々は2006年から1944年にタイムスリップする。
クリント・イーストウッド監督は、本作を戦争映画ではなく、戦争が与える影響を描きたかったとコメントしている。
そして、その狙いは見事に達成されていると思う。
さまざまな個人が登場する。
・栗林中将を演じた渡辺謙は、指揮者として、絶望の中にあっても最大限の戦果をあげねばならない苦悩と、家族のため死んでゆく悲しさを見せてくれる。
・西郷を演じた二宮和也は、若い兵として、素直に戦争に対し疑問とあきらめを露にし、本土の妻とまだ見ぬ子供に思いをはせる。
・バロン西こと西竹一中佐を演じた伊原剛士は、栗林中将同様、真の戦闘とは?を知っている。そして、戦場で見える形の心のよりどころを見せてくれる。
・伊藤中尉を演じた中村獅童は、誇りのため喜んで死ぬ従来の特攻魂を見せ、しかし追い詰められた末に精神崩壊するさまを見せてくれる。
・そして捕虜になるアメリカ兵や投降した日本兵を射殺するアメリカ兵。彼らの背中に国は見えない。あくまで自分自身である。
戦争をテーマにしていて、このように様々な感情を全面に出した作品というのは記憶にない。どうしても中立的になれずプロパガンダ的要素を持っていることが多い。そんな中で、国境を越え俯瞰的に戦争を見た時に現れてくるイーストウッドの思いが痛いほど伝わってくる。本当にこの映画は感情にあふれていて、政治的なメッセージは影を潜めている。だからこそ違和感を感じることなく、挿入される壮絶な戦闘シーンや、自決するシーンも”有”なんだと思う。
もはや戦争を知らない我々世代にとって「靖国」の存在は、散々聞いた事あるけど...何?。という人もいるだろうと思う。恥ずかしながら私もその一人である。「バンザイ」や「靖国」など、当時の日本魂までしっかり理解し、よくある戦争映画の枠を越えた完成度で作品を世に送り出したイーストウッド監督に驚き、この作品が全て日本語で作成されている事に対して更に驚かざるをえない。映画もそういう一面も持っているのだという事を知った。
★5
p.s
2006年12月9日にフジTV系で放送された 『戦場の郵便配達』 を見ました。
CGもしょぼく、俳優の演技もドラマの域をでませんが、当時の資料映像など使われており、限られた予算で勢いで仕上げたあたりはフジらしいですね。
で、ドラマにでてくる市丸利之助少将って誰?と思ったら海軍のTopだったんですね。
硫黄島の戦闘に関してはまだまだ知らない事が多いです。



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